山梨・勝沼と長野・小諸に自社ワイナリーを構え、日本ワインのプレミアムラインに位置づけられる「ソラリス」をはじめ、「酵母の泡」「Yamanashi」「Chikumagawa」「あまつひ」など、幅広い日本ワインを手掛けるマンズワイン株式会社様。日本ワインの造り手として確かな品質を届けるという思いを軸に、ワインづくりだけでなく、その背景にある造り手やワイナリーの魅力を伝えることにも力を入れられています。
一方で、長年運用してきたECシステムには、セキュリティ面の不安や販促機能の制約、手作業の多さ、データ活用の遅れなど、さまざまな課題が積み重なっていたといいます。
そこでオタツーでは、ECサイトの構築・運用をはじめ、ブランドサイトの実装、読み物コンテンツの制作まで幅広く携わらせていただきました。その結果、直帰率や顧客体験の改善、手作業・属人化の軽減、販促施策の精度向上、データ活用基盤の整備、そして継続的に情報発信できる体制の構築が実現しています。
今回は、EC担当者である山崎様に、プロジェクトの全容についてお話を伺いました。
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| 課題 | 旧ECシステムのセキュリティ・安定稼働への不安、販促機能の制約、手作業・属人化した運用 |
| 導入サービス | 定額EC運営代行 ECサイト構築 Webサイト制作 |
| 対策 | 新ECカートへの移行(要件整理〜構築〜運用支援)、ブランドサイトのリニューアル実装、読み物コンテンツの制作 |
| 成果 | 直帰率・顧客体験の改善、手作業・属人化の軽減、販促施策の精度向上、データ活用基盤の整備、継続的な情報発信体制の構築 |
まず、貴社の事業とECサイトの位置付けについて教えてください。

山崎様:
当社は山梨・勝沼と長野・小諸に自社ワイナリーを構えており、「ソラリス」から千曲川シリーズ、スパークリングワインの「酵母の泡」、日本固有品種を生かした「Yamanashi」シリーズなど、用途や価格帯に応じた幅広いワインを手掛けています。
私たちが経営の軸に据えているのは「日本ワインの造り手として確かな品質をお届けするワイナリーでありたい」という思いです。
販売チャネルには、卸売を中心とするBtoBやワイナリーでの直売などがありますが、ECサイトはそれらとは少し異なる役割を担っています。ワイナリーへ直接ご来場いただくことが難しいお客様とも接点を持ち、デジタル上の直営店として、より多くの方へブランドを発信できる場所です。
以前から、ECサイトには利益への貢献だけでなく、ファンづくりや情報発信の起点としての役割も期待していました。
リニューアル前のECサイトでは、どのような課題を抱えていましたか?
山崎様:
以前のECサイトは、実は2000年代初頭から続けてきたシステムで、さまざまな面で限界を迎えていました。外部サービスなども連携していましたが、メンテナンスが難しくなっていたのが実情です。
一番大きかったのは、セキュリティと安定稼働の問題です。
過去には、新商品の販売タイミングとサービス障害が重なり、サイトへアクセスできなくなったこともありました。販売機会の損失につながるリスクを抱えていたため、グループとして求められるセキュリティ基準を満たし、安定して稼働できるEC基盤をつくることが最優先でした。
それに加え、販促面でも多くの制約がありました。予約販売や限定販売、細かなクーポン運用、メールマガジンの配信など、やりたいことがあっても旧カートではなかなか実現できなかったのです。セット販売や領収書の発行、ページの予約更新といった機能も十分ではなく、手動対応が多かったですね。年間を通じてさまざまな企画を行っていましたが、打ち手の幅がどうしても限られていました。
また、当時は外部の運用会社やフリーランスのデザイナーの方々にも幅広くご支援いただいていました。その一方で、運用の一部が個人の経験や判断に依存しており、長期的に考えると、より組織的に運用できる体制へ移行する必要性を感じていました。
顧客体験にも課題がありました。スマートフォンでの使い勝手が十分ではなく、PCサイトも情報構造が複雑で、お客様が欲しいワインへたどり着きにくい状態だったのです。
システム、販促、運用、顧客体験、データ活用。いずれか一つというより、長年使い続けてきたことで、さまざまな課題が少しずつ積み重なっていた状態だったと思います。
リニューアルを決断したきっかけと、パートナー選定について教えてください。
山崎様:
決定打になったのは、2024年10月頃にシステムの脆弱性を突いたBOT攻撃があったことです。
幸い被害はありませんでしたが、「セキュリティを重視したECカートへ移行すべきではないか」という社内議論が一気に具体化しました。これを機にECカートの比較検討を始め、11月に初回ミーティングを実施してスケジュール案を整理し、12月から正式に要求や課題のヒアリングへ入りました。
ベンダー選定では、約180項目の要求をまとめたRFPを作成しました。要件に合う5社から個別ヒアリングを経て3社に絞り、プレゼンテーションを受けたうえで、2025年2月に最終選定を行っています。
私たちは単にサイトを新しくしたかったわけではありません。売上規模の拡大はもちろんですが、その根底には「日本ワインの造り手として、確かな品質をお届けできる会社でありたい」という思いがあります。
そのため、ECについても、戦略を整理するところから実装、運用まで継続的に取り組める体制が必要だと考えていました。
要件定義は2025年3月から4月、新ECの構築は5月から8月、9月以降は運用支援という3つのフェーズで進めました。
プロジェクトには複数のパートナーが関わっていましたが、当社側の経営層や事業部門を含め、ステアリングコミッティと週次の定例で進捗を共有しました。同じメンバーが継続して関わることで、プロジェクトの前提や経緯を共有しながら進められる体制を整えています。
オタツーを選んだ決め手や、プロジェクトで印象に残った点はありますか?
山崎様:
オタツーさんには、EC構築・支援の専門会社として数多くの案件を経験されてきた知見と、実際に手を動かして形にする実働力の両方が期待できました。
特に印象に残っているのは、ワインEC固有の要件を具体的に整理していただいたことです。
20歳未満の方による購入の防止、ヴィンテージの管理、セット商品、ギフト対応など、ワインのECには一般的な商品とは異なる要件があります。約180項目の要求を整理する中で、そうした要件の優先順位をECの知見から整理していただけたことは、選定そのものの質を高めることにもつながったと思います。
プロジェクトが始まってからも、ECの観点からデザインや情報設計(IA)、UI/UX、システム連携や構築まで、複数の視点をまたぎながら選択肢を整理していただきました。
「できるか、できないか」だけではなく、新しいECカートの標準機能でどこまで対応するのか、どの部分はカスタマイズするべきなのかを細かく判断していただけたのも心強かったですね。提案だけで終わらず、その後の実装や運用まで継続して相談できる点も大きかったです。
ECは、サイトを公開したら完成するものではありません。実際に運用して初めて分かることも多いので、構築時の経緯や判断を理解している方々と、そのまま改善を続けられることには大きな安心感がありました。
ECの仕事を積み重ねてこられた会社だからこその解像度が、提案にも実働にも表れていたと思います。
新しいECサイトでは、どのような変化が生まれましたか?
山崎様:
まず大きく変わったのは、お客様がワインを探す体験です。「ソラリス」「酵母の泡」「あまつひ」「Yamanashi」「Chikumagawa」といったブランドだけでなく、色やタイプ、品種、味わいなど、さまざまな切り口から商品を探せるサイトになりました。
スマートフォンでも検索や購入がしやすくなり、「ワインをどう探すか」という体験そのものが変わったと感じています。

ワインの探し方として自然なのはどのような切り口なのか、「ソラリス」のようなシリーズブランドをどう見せるべきか。数多くのEC案件を経験されている視点から、商品特性を踏まえて設計していただきました。結果として、直帰率も大きく改善しています。
システム面では、新しいECカートへの移行に伴い、これまで以上に多様な決済手段へ対応できるようになりました。
また、ヴィンテージやセット商品、ギフトなど、ワイン特有の商品マスタにも対応しています。POS連動の整理や基幹システムとの連携についても、技術面からサポートしていただきました。
新しいカートの標準機能をできるだけ生かしながら、本当に必要な部分だけをカスタマイズする。その判断を一つずつ積み重ねたことで、運用を複雑にしすぎず、必要な機能を実現できたと感じています。
販促や運用体制、データ活用はどのように変わりましたか?
山崎様:
リニューアル前から、年間を通じてさまざまな企画は行っていました。ただ、旧体制では日々の打ち手を回すだけで精一杯になってしまうことも多く、運用が属人的になっていた部分もありました。バナーやメールマガジンなどのクリエイティブも、企画ごとに品質のばらつきが生まれやすい状態でした。
リニューアル後は、まずオタツーさんに新しいECカートの機能を丁寧に調査していただき、これまで実現できなかった販売手法も取り入れられるようになりました。
そのうえで、業務の進め方や役割分担を見直したことで、施策をより計画的に運用できるようになっています。
今回の変化は、単純に打ち手の数が増えたことではないと思っています。一つひとつの施策の精度が上がり、同じような企画を次に行うときにも再現できるようになった。そこが一番大きいですね。バナーやメールマガジンなど、クリエイティブの品質も大きく改善されています。
さらに管理面でも、週次の定例でAsanaと課題管理表を確認する運用と組み合わせることで、「誰がやるか」に依存していた運用から、「どう回すか」というルールで動く運用に変わってきています。判断に迷ったときに立ち戻れる場所が、定例やタスク管理ツールの中にあるので、以前より迷子になりにくくなりました。
データ活用では、BIツールのTableauを使った売上・顧客データの可視化を進めています。新しいECカートから必要なデータを取得できるよう、商品、顧客、受注、メール施策の4カテゴリについて、BI連携を見据えたCSVのカラム設計も行っていただきました。
公開後、お客様や社内からはどのような反応がありましたか?
山崎様:
お客様からは、スマートフォンで購入しやすくなったという声が比較的早い段階から届いていました。
以前はお問い合わせフォームに「欲しい商品が探せない」といった内容が寄せられることもありましたが、リニューアル後はそのような声も減っています。「ソラリス」などシリーズごとの世界観も伝わりやすくなりました。複数本をまとめて購入される方や、ギフト用途で選んでくださる方の動きにも、以前とは少し違った変化を感じています。

社内では、出荷チームから「販促のタイミングが事前に見えるようになった」「ピッキングリストが分かりやすくなり、オペレーションが安定した」という声が出ています。
経営側からも、属人的だった運用がチームで回るようになったことや、データを事業判断に使える形で揃えられるようになったことを評価してもらっています。
オタツーさんが、外部のパートナーでありながら社内の一員のような感覚で動いてくださっていることも、社内で信頼を積み重ねてこられた理由の一つだと思います。現在、ECサイトは年間の販売計画や店舗イベント、ブランドサイトのコンテンツとも連動する、オンラインビジネスのハブになっています。
以前のような「単なる販売チャネル」とは、まったく違う存在になりました。
ブランドサイトのリニューアルでは、どのような変化がありましたか?
山崎様:
以前のブランドサイトは商品情報の掲載が中心で、ブランドストーリーや世界観の発信、ECサイトとの連携が限定的でした。
当社が日本ワインの造り手として何を大切にしてきたのか。そして、これから何を大切にしていくのか。それを自社の言葉できちんと語れる場所が必要だと感じていました。
システム面でも課題があり、メンテナンスの負荷が大きく、情報更新や新しいコンテンツの追加が難しい状態でした。そこで今回のプロジェクトでは、「ソラリス」「酵母の泡」「あまつひ」など各シリーズの位置付けを整理し、造り手やワイナリー、当社の歴史、受賞歴など、既存の下層ページも含めてサイト全体の構造と役割を見直しました。
その中でオタツーさんには、グループ共通インフラへの移管に伴う仕様調整や実装を一貫して担っていただきました。ブランドサイトとして表現したいことを形にするだけでなく、グループの基準に合わせた技術面の調整まで対応していただけたことは心強かったです。

ECサイトとの役割分担も明確になり、「ブランドを知っていただく場所はブランドサイト、購入する場所はECサイト」という導線をつくれるようになっています。
読み物コンテンツの制作はどのように進めていますか?
山崎様:
読み物コンテンツは、以前からマンズワインを知ってくださっているファンやワイン愛好家の方に、より深くワインづくりを知っていただくことを一つの目的としています。
その一方で、まだワインに馴染みのない方にも、ワインに対するハードルを下げ、もっと気軽に楽しんでいただきたいという思いがあります。コアな情報を届けるだけでも、初心者向けの記事だけでもなく、さまざまな方にマンズワインを知っていただき、より好きになっていただける場所にしたいと考えています。
制作にあたっては、こちらの意図や細かな要望を積極的にくみ取っていただけることを、とてもありがたく感じています。おかげで、確認の負荷を抑えながら、品質を保った記事を無理なく公開できる体制になっています。

成果については、記事数もまだ多くありませんので、本当の意味ではこれからだと思っています。ただ、これまで当社が苦手としていた情報発信を、自分たちの意思で継続的に始められたこと自体が大きな成果です。
最終的に目指しているのは、お客様にマンズワインをより深く知っていただき、ワインを実際に楽しんでいただくことです。そのための土台がようやくできたと感じています。
今後の展望と、今回のプロジェクトを振り返った感想をお聞かせください。
山崎様:
今後さらに強化したいのは、ECサイト、ブランドサイト、SNS、直営店の連動です。
まだまだお客様に知っていただけていないことも多いので、接点そのものを増やし、それぞれのチャネルが連動しながら、お客様へより良い提案ができる循環をつくっていきたいです。
例えば、ECサイトで季節に合わせたワインや「今楽しんでいただきたい一本」を提案し、その背景をブランドサイトの読み物で深く伝え、SNSでも発信する。それぞれが役割を発揮しながら連動することで、情報の広がりをつくれればと思っています。
読み物コンテンツも、日本ワインやマンズワインに関心のある方が読んだときに、「ここなら信頼できる」と感じていただける場所として長く育てていきたいです。今後は、取引先の飲食店との対談企画なども少しずつ形にしながら、社外への発信だけでなく、社内のエンゲージメントにもつながるようなコンテンツを増やしていきたいですね。
今回のプロジェクトを振り返ると、いろいろな場面で当初は想定していなかった気づきを得ることができました。取材を通じて社内の人間も知らなかったエピソードが引き出されたこともあります。
外部の専門家と一緒に取り組んだからこそ、初めて見えたものがたくさんありました。苦労もありましたが、やって良かったと心から思えるプロジェクトです。オタツーさんを一言で表すなら、「戦略から現場までを共に担う、信頼できる実働パートナー」だと思います。

私たちの「日本ワインの造り手として確かな品質をお届けしたい」という思いを理解しながら、ECの戦略を整理するところから、実際の構築や日々の運用まで一緒に取り組んでいただいています。
同じような課題を抱えている企業の方には、システムや見た目を新しくすることだけを目的にするのではなく、まず自分たちが「どのような会社でありたいのか」を言葉にすることが大切だとお伝えしたいです。結果的には、それが一番の近道だったと感じています。
派手ではなくても、一つひとつ積み上げていく仕事が、長い目で見ればブランドの評価につながっていくのだと、今回のプロジェクトを通じて改めて実感しました。
──ECサイトの構築や運用、ブランドサイトの実装、読み物コンテンツの制作と、長期にわたる大切なプロジェクトに携わらせていただき、ありがとうございます。これからもマンズワイン様の思いやワインの魅力をより多くのお客様へ届けられるよう、オタツー一同、現場に寄り添いながらサポートさせていただきます。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。