売上は伸びているのに、手元に利益が残らない。EC運営の相談では、こうした悩みをよく耳にします。
ECサイトの利益率は、売上を伸ばすだけでは上がりません。まずどこでコストが利益を削っているかを把握し、利益につながらない施策をやめることが先です。そのうえで客単価やリピートを上げ、作業の手間を減らしていくと、売上の伸びが利益として残るようになります。
以下では、粗利率と営業利益率の違いと目安、ECの利益を削る5つのコスト、売上があるのに利益が残らない3つのパターン、改善の見直しの順番を順に整理します。
ECサイトの利益率とは|粗利率と営業利益率の違い

ECサイトの利益率は、粗利率と営業利益率の2つに分けて見るのが基本です。粗利率は「商品そのものの稼ぐ力」、営業利益率は「EC運営全体の稼ぐ力」を表します。
粗利率は、売上から商品原価を引いた粗利が、売上に占める割合です。
粗利率(%)=(売上高-売上原価)÷売上高×100
営業利益率は、粗利からさらに広告費・送料・手数料・人件費などの販売管理費を引いた営業利益が、売上に占める割合です。
営業利益率(%)=(売上高-売上原価-販売管理費)÷売上高×100
たとえば、売上100万円・商品原価50万円・販売管理費40万円なら、粗利率は50%、営業利益率は10%です。粗利率が高くても、販売管理費が膨らめば営業利益率は下がります。
ECサイトの営業利益率は10〜20%程度、粗利率は30〜60%程度が一般的な目安とされています。ただし、扱う商材や販路、自社EC中心かモール中心かで大きく変わります。数字そのものより、自社の利益率が前年や前月と比べてどう動いているかを見ることが大切です。
ECの利益を削る5つのコスト
ECの利益を削るコストは、大きく次の5つです。売上が増えると一緒に増えるものが多く、気づかないうちに利益率を押し下げます。
1. 商品原価
仕入れや製造にかかる費用です。粗利率を直接決めるため、最初に確認したいコストです。仕入れ値だけでなく、売れ残って値下げや廃棄をした分も、実質的な原価として効いてきます。
2. モール・決済の手数料
モールに出店していれば出店料や販売手数料、どの販路でも決済手数料がかかります。売上に比例して増えるため、販路ごとに手数料を差し引いた後の利益で比べないと、どの販路が本当に稼いでいるかが分かりません。
3. 送料・梱包資材
送料無料の条件や、梱包資材の値上がりは、1件ごとの利益に直接響きます。注文単価が低い商品ほど、送料の負担が重くなります。
4. 広告費
新規のお客様を集めるための広告費です。広告で集めたお客様が一度きりの購入で終わると、売上は立っても利益はほとんど残りません。
5. 人件費・作業時間
受注処理、商品登録、問い合わせ対応、ページ更新などにかかる手間です。社内の担当者が兼務で回していると費用として見えにくく、利益率の計算から抜けやすいコストです。販路や商品数が増えるほど、作業時間は確実に増えていきます。
なお、ECサイトを立ち上げるときの構築費用については、ECサイト構築の費用相場|カート種別・要件別のコスト構造と失敗しない予算配分の考え方で解説しています。ここで挙げた5つは、運営を続けるかぎり毎月かかり続けるコストです。
売上を伸ばしているのに利益が残らない3つのパターン

利益率が下がっている事業者の多くは、売上を伸ばす努力をしていないのではなく、売上を伸ばす施策そのものが利益を削っている状態にあります。EC運営の現場でよく見られるのは、次の3つのパターンです。
1. セールやクーポンに頼りすぎている
セールのたびに売上は伸びますが、値引きの分だけ粗利は減ります。セールに合わせて買うお客様が増えると、通常価格の時期に売れなくなり、値引きをやめられなくなります。売上の推移だけを見ていると、この状態に気づきにくいのが特徴です。
2. 広告で新規のお客様を買い続けている
広告で集めたお客様が2回目の購入につながらないと、売上を保つために広告を出し続けることになります。広告費は年々上がりやすく、同じ売上を立てるのに必要な費用が少しずつ増えていきます。
3. 販路を増やして作業が膨らんでいる
モールへの出店を増やすと売上の入口は広がりますが、販路ごとに商品登録、セール対応、問い合わせ対応が発生します。手数料に加えて作業時間が増えるため、販路を足した分ほど利益は増えないことがよくあります。販路を増やしたときに起きやすいつまずきは、EC多店舗展開で失敗しないために|始める前に知っておきたい「展開後のつまずき」と体制づくりで詳しく紹介しています。
3つに共通するのは、売上の数字は伸びているため、問題が表に出るまでに時間がかかる点です。
利益率を改善する見直しの順番

利益率の改善は、「足す」より先に「やめる」から始めるのが近道です。新しい施策を足す前に、今ある施策のどれが利益を削っているかを見極めないと、手間とコストが増えるだけになりかねません。見直しは次の4つの順番で進めます。
ステップ1:数字を商品別・販路別に分けて見る
全体の利益率だけでは、どこに問題があるかが分かりません。商品ごと、販路ごとに、手数料・送料・広告費まで差し引いた利益を出してみます。売上は大きいのに利益がほとんど残っていない商品や販路が、見直しの出発点になります。
ステップ2:利益につながらない商品・施策をやめる
ステップ1で見えた「売上はあるが利益が残らないもの」を、続けるか、条件を変えるか、やめるかを決めます。たとえば、値引き幅の大きいセールの回数を減らす、利益の出ない商品を販路から外す、成果の薄い広告を止める、といった判断です。何をやらないかを決めることが、限られた予算と人手を利益の出るところに回す第一歩になります。
ステップ3:客単価とリピートを上げる
やめる判断で浮いた予算と手間を、すでに買ってくれたお客様に向けます。まとめ買いや関連商品の提案で1回あたりの購入金額を上げ、購入後のフォローで2回目の購入につなげます。新規客を広告で集め続けるより、利益が残りやすい売上の作り方です。
ステップ4:作業を仕組み化・外部化する
最後に、人件費・作業時間のコストを減らします。商品登録やページ更新の手順をフォーマット化する、繰り返しの作業をツールや生成AIに任せる、社内で手が回らない業務を外部に任せる、といった方法があります。作業時間が減れば、担当者は売り場づくりや分析など、利益を生む仕事に時間を使えるようになります。
自社だけで改善を進めるのが難しいとき
見直しの順番が分かっていても、日々の運営に追われる担当者が、自分の手で数字を分析し、施策を整理するのは簡単ではありません。とくにステップ1の数字の分解と、ステップ2の「やめる」判断は、運営の手を止めて取り組む必要があります。
こうした場面では、すべてを自社で抱え込まず、手が回っていない業務だけを外部に任せるのも1つの方法です。日々の作業を外部に任せれば、社内の担当者は数字を見て判断する仕事に時間を使えます。どの業務を社内に残し、どの業務を任せるかの考え方は、EC運営は内製か外注か|業務別にコスト・スピード・ノウハウ蓄積を比較する判断フレームワークで整理しています。
また、商品説明文の下書き、問い合わせへの返信案、売上データの集計といった作業は、生成AIで手間を減らせる範囲が広がっています。外部の力と生成AIを組み合わせると、少ない人数でも作業時間を抑えながら運営を回しやすくなります。
オタツーは、16年・4,000件以上のEC支援で培ったノウハウをもとに、日々の運営業務から数字の分析・改善提案までを支援しています。売上の伸びを利益として残せる運営体制づくりにお悩みの方は、EC運営代行をご覧ください。
まとめ
ECサイトの利益率は、売上を伸ばすだけでは上がりません。粗利率と営業利益率の2つで現状を把握し、商品原価、手数料、送料、広告費、人件費・作業時間の5つのコストがどこで利益を削っているかを確かめることが出発点です。
改善は、①数字を商品別・販路別に分けて見る、②利益につながらない施策をやめる、③客単価とリピートを上げる、④作業を仕組み化・外部化する、の順で進めます。新しい施策を足す前に、やめる施策を決めることが、売上の伸びを利益として残す近道です。
利益率の改善や、運営体制の見直しについてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。